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2時間ドラマにおいての芸術家とは

 

だいたい2時間物のドラマにおいての芸術家・美術評論家などの描かれ方にはかなりの偏見があります。サラリーマンのような普通の勤めではない、何か一般的な華やかさが必要な時によく登場するようです。しかし、普通の場合、実際に有名美術評論家とかの名前を知っています?知らないよねぇ〜。いくつか美術に関する本を買ったりすると、大学教授とかの名前を数人覚えたりはしますが。それにしてもそんなに華やかさがあるとは思えませんね。
「愛する妻への遺書」の大学教授原田慎二郎は、評論家・鑑定家としても有名。いかにも偏屈な研究者という感じ。妻への愛情も、克明な行動の詮索や日記の記述で、死後にわかるという設定。普段は皮肉っぽくて、愛想のない人だったんでしょうね。だから妻の方は同じ研究室の助教授によろめいたり(?)しているのよね。そういう内向的な性格は職業的にもよく判ります。その二面性が妻の事件への没入を、納得させます。

正反対なのは「早朝の手紙」の槙圭一郎。美術評論家で女子大の非常勤講師。服装からもいかにもっていう感じのうさんくささ(笑)遊び人というイメージを全面に押し出しています。いったい何を研究してたのか知りたいですね。性格的に、地味だったりマイナーな分野ではなさそうだし。なんとなくアール・ヌーボーとかを語りそう。ガレとかドームのランプなんかの解説を、バブルの時代に雨後の何とかみたいに地方で出来た小ミュージアムのパンフレットに書いていそうだ。

画廊のオーナー兼美術評論家というのが「作家 小日向鋭介の推理日記」の八木沼謙吾。贋作で儲けて、華々しく活躍するというちょっと厚かましいタイプ。テレビの料理番組に出て、貧乏学生といいつつフランス留学をほのめかすのです。こういう派手な人から、絵なんか買っちゃいけません。

うさんくさいといえば、絵描きの卵というのも、わりあいよく登場します。苦学生のはずがいつのまにか女のヒモになって・・・というパターンですね。これは俳優・小説書きなどのバリエーションがありますが、どうもそれらは後日成功して、女性とのトラブルに悩む話が多いのにくらべて、絵描きというのは、将来性がないのか(?)自分が犯罪に走る話が多いです。「Gメン’75 パレットナイフの殺人」は、そういう卵の青年が女に生活の面倒を見てもらっておきながら、浮気をして殺されかける。ただ、そこからがらっと変わって、父が自殺した原因を作った男への復讐に走るという話。女の方ばかりを追う構成なので、考えてみるとなぜこれほど細密な犯罪を考えるような男が、あんな自堕落な事やっていたんでしょうか?あの事件がなかったら、完全犯罪になったかもしれないのに・・・。

同じく「Gメン’75 ブリュッセル国際空港の女」は留学生の絵描き。でも、いつのまにか生活のために観光客のガイドになったり、ヒモ状態。同居していた仲間が画廊の娘と結婚して、スポットライトを受ける側に行ってしまったくやしさもあるでしょう。しかし、女をだましたりするのも平気になっちゃうし、画学生のイメージ悪くしているなぁ。たしかに絵で成功するのは難しいですが・・・。


記載1999/12/26
 
「鍵師2」では、オーナーどころか、美術館のニセ館長!本来は暗黒街(?)のドンの腹心というか、部下なのですが詐欺のために館長になりすます。でも、それらしい感じなんですよ(笑)

バブルもはじけちゃって、画廊などがテレビ的華やかさを失いかけているので、これからはドラマにはあまり登場しないと思っていたのですが「ふるさとの傷」では画廊のオーナーです。表面は芸術家を支援するいい人なんですが、裏では脅迫者であったという・・・。やはり人間の二面性が問題になる話でした。

2001/02/05追記
 
最初の記載の頃に比べると「お宝鑑定団」などで鑑定士や骨董商などの顔が広く知られるようになり、あまり胡散臭いキャラは見かけなくなった気もします。絵画の転売で裏金献金なんてことも減ったでしょうし、ドラマでは扱いにくくなったのかもしれません。
 
2016/10/15追記