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西田ファンのためだけの
「帰ってきたウルトラマン」ガイド

 
「MATの No.3」

と、言えばもちろん岸田隊員
ここでは「帰ってきたウルトラマン」においての岸田隊員の人柄と行動をチェックします!
まずMATとはMonster Attack Teamの略。
それまでの科学特捜隊とかウルトラ警備隊とかに比べるとずっと格好良いじゃないですか。

そのMATのNo1は加藤隊長(22話より伊吹隊長)
No2は面倒見のよさそうな南隊員
No4はなんだか調子の良さそうな上野隊員
No5は紅一点丘隊員
No6は新人「ウルトラマン」郷隊員
こういうメンバーの中でお仕事なさってます。

さて、シリーズ前半の初期設定版岸田隊員は、はっきり言って浮いてますね。なんだか茶髪系だし(笑)MATの中では、開発部門的な事を担当。実戦でも操縦・射撃などの腕もいい。地上戦の時はたいていバズーカ砲抱えてました。文句を付けにくいほど優秀な人材なのですが、とにかく頭が固い融通が利かない愛嬌がない。自分が正しいとかたくなに信じている。他人の失敗に厳しい

アルコールが好き。これはMATみんなだろうけど(特に伊吹隊長が来てから)よく飲んでます。出動して、野営して飲んでるんだもの。特に岸田はスナップボトルまで持参。タバコも吸う。
しかし、正義感に厚いことは人一倍。「MAT精神は・・・」というのが口癖。お母さんに「文夫さん」と呼ばれていて、そのお母さんには「おっしゃってください」などと丁寧。お育ちの良さが伺えますね。でも同僚には「〜だ」と言い切り口調と、岸田は上下関係がはっきりした呼び方をしています。そういうところが堅苦しい印象にもつながるのだろうけれど。隊長はもちろん「隊長」だが、南のことは「南隊員」。南と岸田は同い年の設定だが、めったに呼び捨てにしていない。ちょっと南の方が先輩なのか、南は「岸田」と呼ぶ。あとは「上野」「丘君」「郷」。丘は女性なのでちょっと丁寧というより、男勝りでけっこう辛辣な口を利く丘には意外に頭が上がらないのでは・・・(笑)(11話の丘の岸田評はちょっと嫌みで二十歳の女の子とはとても思えないし(^_^;) そういえば伊吹隊長さえ「丘隊員」「丘君」と呼んでいた・・・) で、そういうきっちりした岸田が一度キレると「貴様!」の連発。反動かしらねぇ。

8話「怪獣時限爆弾」では、怪獣を見くびる他の隊員に「笑っている場合じゃないぞ。早めに処理してしまうのが我々MATの任務だ」などと意見しています。まぁ、いつもはこのように冷静な人なのですが、思い通りに行かないと激昂するのが欠点。真面目な人ほど、キレると怖い。

11話「毒ガス怪獣出現」では、まず始めにパトロールを勝手に切り上げた上野を叱咤。そこは全然懲りないタイプの上野。しまいに岸田は「貴様は水でも飲んでろ!」と、怒って代わりにひとりでパトロールに出る。しかし、当の上野には「岸田隊員は堅すぎるよ」丘にも「岸田家は誇り高き軍人一家なのよ」加藤隊長には「薬のつもりで拝聴するんだな」など言われ放題(^_^;)  そのくらいなら、ただの堅物で済むのでしょうが。

5話「二大怪獣東京を襲撃」6話「決戦!怪獣対マット」の場合、まず、パトロール中に見つけた謎の岩石を岸田はよく調べもしないで(スコップで叩いただけ!)マットシュートで焼いておしまい。調査を要求する郷を押し切って帰る。で、後で怪獣に対する攻撃時に少女を見たと言って爆弾を発射しなかった郷をさっきの一件の意趣返しと言い切る思いこみの強さ(笑)加藤隊長もしかたなく郷を自宅謹慎にせざるを得ない始末。こういうところは岸田の叔父が地球防衛庁長官という圧力もあるのだろうが、それより、岸田にいつまでも食ってかかられる方が隊長はいやだよね。温厚な加藤隊長では岸田のタイプは確かに手が余る・・・。後の隊長の異動はこれも原因の一つだったりして(笑)8話で岸田の発案のX弾が前日に完成しテストまでしているのに、加藤隊長はそれを知らないありさま(^_^;)。上野から教えられるようではねぇ。岸田の行動には関与したくなかったのだろうか?(笑)。
話は戻って5話では地下街に閉じこめられたアキたちを救おうとする郷の元に、他の隊員も助っ人に現れるがなぜか岸田の姿は無い(^_^;) そのまま攻撃に向かう時にもまだ来ない。(たぶん基地でひとりで憤っていたんでしょうねぇ)入院したアキのところへやって来た時には一緒にいるのだが、これはまた、嫌みな言い方で避難勧告。

しかし、11話でかなり隊員たちにうち解けた模様。父が旧日本軍で毒ガスの開発をしていたり、兄がそのことを苦にして自殺していたりようやく岸田隊員のキャラクターも、ただの嫌みな奴から脱却した記念すべきエピソードではありました。

そんな岸田が28話「ウルトラ特効大作戦」のころになると、いったいどうしたのかという変わり様。特にこの回は最初から最後まで郷と岸田の掛け合い。他のことは全然印象に残らない(笑)途中、話に気を取られてニアミス。「ぶつかったりしたらMATの予算が削られるところだぞ」そんな問題じゃないぞー。もっと気にすることがあるはず!!怪獣が原因で台風が異常発生した為に右往左往する気象台を評し「気象台泣かせだ。たまには薬だ」と言って隊長に「岸田、口を慎め」と言われているし。「あいつのおかげで東京の空気が綺麗になってるっていうのに、ちょっと気が引けるな」温厚な南にまで「ばかなことを言うな」と言われています。いったいどうしたんだ?岸田! アローの機内で軽口をたたく郷と岸田に隊長のかみなりが落ちる。「無線のスイッチは切っておいてくれよ、ユリちゃん」いつのまにちゃんづけなんだ(笑)いつもは「丘隊員」又は「丘君」なんだけど。最後には「そういえばさぁ、何だよな。いつもウルトラマンにいいとこをさらわれるよな」発言。MATの能力に自信過剰ですよ〜(笑)その口調も、初期設定版とは大違い(^_^;)「お前ねぇ」とかなんだかくだけた感じで。この回はめずらしく通信コンソールに座っていたりもします。

寒いところが苦手のようで39話「20世紀の雪男」ではかなり雪山へ行くのは嫌そう(笑)運動不足のようだから行けと郷が言われたのに、自分が指名されて「僕はこの通り運動不足じゃありません」やたら体操みたいに体を動かして見せるところなど、なかなか可愛らしいところも。でも元気が余ってるからと、結局雪山へいくはめに。このあたりの感じは後の「アイフル大作戦」の丘大介に通じますね。

44話「星空に愛をこめて」もいかにも岸田隊員らしいエピソード。怪獣に攻撃された女性を救出し、病院へ送った岸田はその女性あかねに(たぶん)一目惚れ。しかし、その救出劇もほとんど郷にやらせていたと思うんですが(^_^;)  見つけたのも郷だし。岸田は「郷、早くしろ」とか言ってばかりで。たしかに上役なんでしょうけど、あかねを抱き上げて車で運んだだけなんじゃぁ。(で、あかねには岸田さんに助けられたと言わせている・笑) 病院に1日に2度も見舞いに行って隊長のひんしゅくを買うし。そして、花なぞ振り回しながらいきなり郷に「近々俺は結婚するかも知れない」など言い出す。「鬼火なんて嫌らしいものじゃないぞ、あれは幸せの火だ。二人の胸に燃えあがる聖火だ」あらららら。いや、運命の赤い糸かもしれないけれど、それは早すぎるっ。きっと相手の気持ちなんて考えてもみていないんだろうなぁ・・・。そういう思いこみと短絡思考はとっても岸田的(苦笑) 自分がこれだけ好きなんだから、きっと相手も好きなはずだ! あかねの方も岸田のことを好きになってくれたから話が成立するけれど、これが片思いだとしたら「特捜最前線」とか「Gメン’75」あたりの犯人役へまっしぐら(笑)残念ながらあかねは宇宙人で、悲恋に終わりましたが・・・。MATでは新兵器とかレーダーとかの開発に参加している様ですがレーダーなんて極秘事項のはずなのにあかねにぺらぺらしゃべってるしねぇ。

8話では岸田の開発したX弾が問題になる。怪獣に打ち込んだ爆弾が不発で時限装置がかかっていたというエピソード。郷の失敗が原因なんです。しかし、岸田隊員なぜ時限装置なんてつけたんだよぅ・・・。いくら新作のお披露目したいって思っても、いきなり実戦じゃぁ無理でしょう。それなら、郷に行かせないで自分でやってみたらいいのに。

42話「富士に立つ怪獣」では、思いこみナンバーワンのぶっちぎれが見られます。アップデートして、好青年となったシリーズ後半では出色です。太陽光線を屈折させられる怪獣のせいで、攻撃が出来ない。「我々の科学を信じないのか!」といきり立つ岸田。で、やっぱり飲んでる。非常時でもMATは飲酒オーケーなんだ(笑)有視界飛行が出来ないならレーダーがあると岸田は攻撃するが、電磁波まで狂わされていて村人の方に爆弾が落ちる。隊長の中止命令にも従わずに岸田は攻撃を続行!おいおい!怪獣が倒された後には、けろっと出て来て冗談言ってるし(笑)あれは重罰ものでは・・・。

意外に岸田フリークにお勧めなのは47話「狙われた女」。宇宙怪獣が憑依した丘がミスを犯し、MATの行動に支障を来すという話。冒頭いきなり郷と南が行方不明になってしまう。郷って主人公なんですがね(苦笑)まぁ、ウルトラマンが近くにいたら話にはならないんでしょうが。おかげで伊吹隊長、岸田、上野という珍しい取り合わせの進行です。怪獣が現れて3人とも出動したら本部が空っぽになってしまう。「本部を守るより怪獣だ」と、隊長。え?でも、よく6人とも出撃してるじゃない。その時は空なの?「我々3人のうち2人まで倒れたら、残った1人は戻れ」という隊長の命令に岸田は「最後の1人にはなりたくありませんね」。無事基地に戻って(やっぱり)酒を飲んでる3人。隊長がトランプを出して、ジョーカーを引いた者が次は残れと言う。出されたカードを岸田は全部取り上げてジョーカー以外を破る。いやぁ恰好いい♪「隊長はせめて若い2人のうちどちらかを残そうというお考えでしょう?ジョーカーは隊長がどうぞ」上野は「隊長が残れば次のMATが編成できます」という2人の熱意で隊長も「次も3人で出動だ」と言う。岸田は「郷と南は仲間はずれだ」。個人的にはこの回の岸田が一番恰好いいと思ってます。

つけたしですが48話「地球頂きます!」の最後のお茶のシーン。カップを運びながら「怠けるのをヤメタランス」と言うところの足運びが妙に気に入ってるんですが(笑)

MAT以降の岸田隊員はどうしたんでしょうか?「A」ではMATはなくなってるし。それにしても、富士フィルムのCMを見て、ウルトラシリーズに長官あたりで出てくると面白いなと思ったのは私だけじゃないでしょう?(^_^;)モロボシ・ダンもフルハシも再登場したし。感じとしては「必殺」の鬼塚与力ってところで(笑)

急に真面目に(笑)
振り返ってみると岸田隊員というのは西田さんがインタビューなどで言われるように、西田さんにとっての「原点」なのでしょう。岸田隊員のキャラクターには他の隊員の中には見られない要素がいっぱい見え隠れします。それが二枚目なのに、頑固だったり、冷たかったり、野心家だったり、マザコンだったり、変質者だったり(笑)現実には完璧な人間はいないし、きれい事になりがちなドラマの中でどこか破綻したところのある人間像をずっと演じて来られた西田さん。それが私を魅了してきたポイントですね。
そして、私的には岸田隊員の「No.3」という番号が西田さんを象徴しているような気もするのです。
ドラマのタイトルロールは、まず主役。最後は重要な役。西田さんは最後から2番目あたりが多いですよね。
たいてい、ドラマを動かすのはそういうポジションの役目です。そのポジションをなんとなく「楽しく」演じてられる様に見えるところが素敵ですね。
 
1999/05/28記載